石田三成一族のお寺に戸愚呂兄弟が現る?住職の肩に乗った猫ちゃんが幽遊白書のキャラクターみたいで大反響
人気マンガ『幽遊白書』に登場する元人間の妖怪コンビといえば戸愚呂兄弟。サングラスを掛けた長身の弟とその肩に乗る小柄な兄という、体格のギャップが印象的なキャラクターで、インターネット上ではしばしばパロディの対象となったりすることがあります。
京都市右京区にある壽聖院(じゅしょういん)のXアカウントは先日、「戸愚呂(猫)」というコメントと共に1枚の写真を投稿。そこに写っていたのは、まさに戸愚呂兄弟を再現したかのような光景でした。
実際の写真(提供:壽聖院)
住職の肩の上にちょこんと乗ったまま運ばれてゆくサバトラ柄の猫ちゃん。
その小ぶりなサイズ感は戸愚呂兄弟の兄者を彷彿とさせるかのようですが、少し違和感を感じるのは住職の頭の上にポンと置かれた右手。原作では弟の方が兄よりも強くて格上のキャラクターですが、このお寺では猫ちゃんが住職さんを従えているかのようで、上下関係が逆転してしまっているような後ろ姿がとってもシュールです。
この写真が投稿されると10万近くの”いいね”が寄せられるほどの大反響。写真を見たユーザーからは「懐かしい」「猫が兄者www」「吹き出した(笑)」「肘置きw」など、往年の人気マンガのキャラクターを猫に見立てたセンスに思わず笑ってしまうユーザーが続出しています。
それにしてもこの写真、猫ちゃんと住職さんが何をしているところを撮影したものなのでしょうか。まさか本当に戸愚呂兄弟ごっこをしていたとは思えません。
住職さんにお話を聞いてみると、この猫ちゃんはたまに脱走してお寺の中を走り回ることがあるのだそうですが、この写真はそれを捕まえて連れ帰った時のワンシーン。確かに写真をよく見ると、住職さんの左手は猫ちゃんの脇をグッと掴んでいて、逃げられないようにロックしているのが分かります。
これは逃げられニャい…
猫を飼っている人なら、自宅で手軽に戸愚呂弟の気分を味わえそうなテクニックですが、実はこれ、それほど楽な状態ではないようです。と言うのも、右手を乗せている猫ちゃんの爪がたまに当たるのだそうで、短く刈り込まれた住職さんの坊主頭ならなおさらのこと。そのため「爪が刺さって痛いな(笑)」と思いながら連行していたのだとか。
一方、肩に乗って運ばれている猫ちゃんの気持ちについては「『今日は見晴らしがいいなあ』ぐらいに思っていたのではないでしょうか。」と推測してくれました。
この後、5分ほど担がれたままお寺を一周して家に戻ってきた猫ちゃん。脱走したことを少なからず反省したのかと思いきや、なんとすぐさまミルクを要求するという暴挙に出てしまいます。肩に乗っている時のふてぶてしさと言い、悪びれる様子のない態度と言い、大物感を感じずにいはいられません。
凛々しいご尊顔
そんな猫ちゃんが住職さんと出会ったのは2015年、秋の彼岸の時期のことでした。
当時、大分県の道場で修行を積んでいた住職さん。ある日道場で食事を取っていると、やせ細った一匹の猫が怪我をした足を引きずりながら迷い込んできました。通常、修行僧は食事中に動くことを禁じられているそうですが、ネコ好きの老師から「何してんだ!早く捕まえろ!」と怒られてしまい急いで保護することに。
その後、猫ちゃんは保護した日にちなんで「彼岸(ひがん)」と名付けられることになります。ちなみに仏教における彼岸とは、迷いのない悟りの世界を意味する大変ありがたい言葉なのだそう。
そうして、しばらくは大分の修行道場で面倒を見てもらっていた猫ちゃんでしたが、やがて転機が訪れます。
それは住職さんが修行を終えて京都へ帰る日のこと。突然老師さんから「もちろん彼岸と一緒に帰るよな?」と言われたことから、猫ちゃんを引き取ることになってしまった住職さん。
修行を終えた者が道場から去る際には、残りの修行僧全員が並んで深々と低頭しながら見送るのが慣例なのだそうですが、この時は住職さんが猫を片手に持っていたために、全員が笑ってしまう前代未聞の別れのシーンになってしまったのだとか。
その時の様子
そんなこんなで京都のお寺で暮らすことになった彼岸くん。引っ越し後は足の手術をしたりと色々あったけれど、今ではすっかりお寺の看板猫として定着。天気が良い日にはリードをつけて日向ぼっこに出してもらったり、檀家さんにかわいいと褒められたりしながらまったり過ごしているのだと言います。
運が良いと会えることも
今回インタビューに応じてくれたのは、壽聖院第16代住職の西田英哲さん。
壽聖院は慶長4年(1599年)、安土桃山時代の武将・石田三成により、父正継の菩提寺として創建されたお寺。境内には石田家一族の供養塔などがあり、拝観するには事前予約が必要となりますが、お参りに訪れた際に看板猫の彼岸くんが起きていて、かつご機嫌な時は会える可能性もあるそうです。
取材協力:妙心寺壽聖院(@jusyoin)さん
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